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~教育長室から~

[2018年4月13日]

~教育長室から~

平成30年度 教育長室から                          

『木に学べ』

                  

 去る3月末をもって2期目の任期を大過なく終えることができました。これはひとえに市民のみなさまの温かいご支援のおかげと感謝しております。本当にありがとうございました。また、3月議会で再任の同意を得、4月から3期目を務めさせていただくことになりました。もとより力量の乏しい私ですが、今後も市民のみなさまのお力を得ながら本市の未来を担う子どもたちのために鋭意努力して参りますので、変わらぬご支援・ご協力をお願いいたします。

 今回は、日本の代表的な宮大工西岡常一さんのお話をさせていただきます。

 日本に近代教育が導入されたのは、明治になってからです。長い鎖国時代が終わり、文化や政治、科学などすべてのものを欧米から導入しました。教育制度もドイツから導入されました。当時は『EDUCATION』と英語で呼ばれていました。明治政府は『EDUCATION』を教育と翻訳し、日本各地で学校制度を整えました。それ以来『教育』という言葉が全国に広がりました。『教育』には『教』という字が含まれているため、教えることが何よりも大切だと多くの教師は考えるようになりました。そのため教師は教材研究に励み、子どもたちに教えるだけの人になりました。しかし、本来、『EDUCATION』とは「その人が持っている能力を引き出し開発すること」という意味です。「教えることは」は英語で『TEACHING』です。明治政府はどこかでこの2つの単語の意味をはき違えたようです。子どもに知識を理解させ記憶させて、テストで良い点を取らせることや、部活動で子どもたちに一生懸命技術指導し、好成績を収めることが教師の仕事になりました。

 今年、明治150年を迎えるに当たり、本当にこれで良かったのでしょうか!

 子どもたちの中には学習が得意な子、スポーツが得意な子、絵を描くことやピアノ演奏が得意な子、そしてそれらが苦手な子、短気な子、明朗な子、体格の差や障がいのある子、外国から日本に来て日本と生活様式が全く違う子等々、いろいろな子どもがいます。これらの子どもたちを含め、子どもたち全員がそれぞれの個性を持っています。ところが私たち大人は、子どもが本当に知りたいことや、やってみたいこと、どろんこになって遊びたいことをさせず、知識や技術を詰め込み、点数や勝敗の結果を中心に評価してきました。この地球上には70億以上の人々が生活しています。つまり70億以上の個性が存在していることになります。その個性に応じて子どもらの持っている能力を引き出すことが、本来の『EDUCATION』であり、教育者としての使命ではないでしょうか。

 私が大切にしている書籍の中に、法隆寺棟梁西岡常一さん(故人)が書いた『木に学べ』があります。西岡さんは、明治41年に法隆寺の修復や薬師寺の再建に携わってこられた宮大工の棟梁の家に生まれました。西岡家には、棟梁としての心得がありました。その一つに「堂塔の建立には木を買わず山を買え」という教えがありました。堂や塔を作るには大量のヒノキが必要になります。そのヒノキを材木店で購入するのではなく、ヒノキの生息する山をすべて購入するのです。それは、どの山のどの斜面に生えている木かを知るためです。すべての木には癖があります。南斜面の木はすくすく育ちますが、年輪が粗く弱い傾向があるようです。それに比べ北斜面の木は、日当たりが悪くなかなか育ちませんが、年輪が密で強いそうです。また風の強い場所で育った木は風に負けまいと反対方向にねじれるそうです。枝を払って木材にするとその癖がわかりにくいので、木の癖を見抜くため、木を買わずに山を買うのです。西岡さんによると、棟梁の仕事は木の癖を見抜くことから始まります。心得には、「堂塔の木組みは木の癖組」とあるようです。右に曲がる癖を持った木と左に曲がる癖を持った木とを組み合わせれば、お互いに癖を消し合って強い木組みができます。法隆寺は聖徳太子ゆかりのお寺で、推古15年(607年)に建てられた世界最古の木造建築として日本最初の世界遺産に登録されました。すでに1400年以上も風雨に耐えています。西岡さんは飛鳥時代の宮大工は木の癖を知り尽くして法隆寺を建てたから、今も残っていると断言しています。

 これらのことは教育にも共通します。何も語らず動くことのできない一本一本の木にもそれぞれ癖があります。毎日元気に活動している子どもたちに癖(個性)がないはずはありません。私たちは、子ども一人一人の個性を見抜いて教育をしているでしょうか。西岡さんのいうヒノキは、子どもそのものです。また木が育っている南斜面や北斜面、風や雨は、家庭や地域です。そして、堂や塔とは私たちの生活している社会だと考えられます。法隆寺のように1000年以上も栄える社会にするために、私たちは子ども一人一人の個性や家庭・地域を十分に理解し、自分を生かせる大人になれるように育てていかなければなりません。市民のみなさんの温かい見守りや応援を心から願っています。

   

                         平成30年4月                                近江八幡市教育長 日岡 昇

 

 

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